大河ドラマ「べらぼう」視聴率9.5％は失敗作？

べらぼう最終回視聴率9.5％の衝撃

12月14日に放送されたNHK大河ドラマ「べらぼう」最終話の平均世帯視聴率は9.5％でした。個人平均視聴率は5.3％という結果になっています。 最も注目すべきは、初回から最終回までの期間平均視聴率も同じく9.5％だったという点です。大河ドラマで期間平均が2桁に届かなかったのは、2019年の「いだてん～東京オリムピック噺～」(8.2％)以来となりました。

最終回は蔦重の最期の瞬間までギャグシーンが散りばめられ、笑いあり涙ありの展開でした。「光る君へ」から続いた合戦シーンのない異色の大河ドラマは、こうして幕を閉じたのです。 横浜流星さんにとって初のNHKドラマ出演であり、大河ドラマ主演という大役でした。脚本は「おんな城主 直虎」で評価された森下佳子さんが担当しています。

蔦屋重三郎と横浜流星という選択

「べらぼう」の主人公は江戸時代の版元・蔦屋重三郎です。喜多川歌麿、東洲斎写楽、葛飾北斎といった浮世絵師たちを世に送り出した”江戸のメディア王”として知られています。 横浜流星さんは29歳でこの大役に抜擢されました。これまで映画やドラマで数多くの実績を持つ彼ですが、NHKドラマは初出演。大河ドラマの主演という重圧は計り知れないものだったでしょう。

蔦屋重三郎という人物は、武将や政治家と比べると一般的な知名度が低い存在です。大河ドラマは歴史上の有名人物を扱うことが多いため、この題材選択自体が挑戦的でした。 さらに「光る君へ」に続き、2作連続で合戦シーンがない作品となりました。刀を振るうシーンや戦国武将の活躍を期待する従来の大河ファンにとっては、物足りなさを感じた可能性があります。

脚本を担当した森下佳子さんは「おんな城主 直虎」で高い評価を得た実力派です。繊細な人間ドラマと歴史の交錯を描く手腕には定評がありますが、今回はその魅力が視聴率に結びつかなかった形となりました。

過去の低視聴率大河ドラマとの比較

大河ドラマの視聴率は年々低下傾向にあります。「べらぼう」のワースト2位という記録を正しく理解するため、過去作品と比較してみましょう。 ワースト1位の「いだてん」(8.2％)は、2019年に放送されました。近代オリンピックの歴史を描いた意欲作でしたが、視聴率的には苦戦しました。

しかし、内容的には高い評価を得ており、熱心なファンを獲得した作品です。 「べらぼう」の9.5％という数字は、確かに低い水準です。しかし、2010年代以降の大河ドラマで15％を超える作品は限られています。「真田丸」(16.6％)、「西郷どん」(12.7％)、「鎌倉殿の13人」(12.7％)などが比較的高い数字を記録しました。

近年では「どうする家康」(13.0％)、そして「光る君へ」(11.8％)と続いています。「べらぼう」はその流れの中で、さらに低い数字となってしまいました。 テレビ離れが進む現代において、視聴率だけで作品を評価することには限界があります。特に若い世代はリアルタイム視聴よりも録画やオンデマンド視聴を選ぶ傾向が強いのです。

制作現場とキャストの熱意

視聴率という数字の裏には、制作スタッフとキャストの並々ならぬ努力がありました。横浜流星さんは初のNHKドラマで大河主演という大抜擢を受け、1年間走り続けました。 最終回では冨永愛さんが演じる老女・高岳の”べらぼうラストショット”が公開され、「さすがの貫禄」と話題になりました。脇を固める実力派俳優陣の演技も光っていました。

江戸時代の版元という特殊な世界を描くため、美術セットや衣装にもこだわりが見られました。浮世絵の制作過程や、当時の出版文化を丁寧に再現する姿勢は評価に値します。 森下佳子さんの脚本は、重厚な歴史ドラマというよりも、人間の生き様や夢を追う姿を軽やかに描くスタイルでした。ギャグシーンを最期まで入れ込むという演出は、賛否両論を呼びましたが、作り手の明確な意図があったことは確かです。

1年間という長期間、毎週日曜の夜に視聴者を楽しませ続けることの難しさは想像を超えるものがあります。その挑戦自体に敬意を払うべきでしょう。

視聴率低迷の理由を考察

なぜ「べらぼう」の視聴率は伸び悩んだのでしょうか。いくつかの要因が考えられます。 まず、題材の知名度の低さです。蔦屋重三郎は歴史好きには知られた人物ですが、一般層への認知度は高くありません。織田信長や坂本龍馬のような誰もが知る人物と比べると、入口のハードルが高かったといえます。

次に、2作連続で合戦シーンがないという点です。大河ドラマといえば戦国時代や幕末の動乱期を描き、派手なアクションシーンが見どころの一つでした。文化人の生涯を描く静かなドラマは、従来のファン層とミスマッチを起こした可能性があります。 さらに、視聴習慣の変化も無視できません。若い世代はTVerやNHKプラスで後から視聴することが増えています。リアルタイム視聴率だけでは、実際の視聴者数を測りきれない時代になっているのです。

また、SNSでの話題性も視聴率に影響します。「鎌倉殿の13人」や「光る君へ」はTwitter(現X)でのトレンド入りが頻繁にありましたが、「べらぼう」はそこまでの盛り上がりを見せられませんでした。 日曜夜8時という時間帯の競合も考慮すべきです。他局の人気番組や、外出習慣の回復など、視聴者の選択肢は増え続けています。

SNSで話題の「べらぼうロス」現象

興味深いのは、視聴率とは裏腹に、SNSでは熱烈なファンの声が溢れていることです。最終回放送後、「泣けた！笑った！来週どうすれば…ロスです涙」「最初から最期まで衝撃でした」といったコメントが相次ぎました。 ハッシュタグ「#べらぼう」「#べらぼうロス」では、作品への愛と別れの寂しさを綴る投稿が続出しています。キャラクターへの愛着や、物語の余韻を楽しむファンの姿が見られます。

特に若い世代を中心に、リアルタイムではなく録画やオンデマンドで視聴し、SNSで感想を共有するスタイルが定着しています。これは従来の視聴率測定では捉えきれない視聴形態です。 横浜流星さんのファンも、1年間の主演を労う投稿を多数行っています。「お疲れ様でした」「素晴らしい演技でした」という感謝のメッセージが、彼の公式SNSにも寄せられているでしょう。

コアなファンを獲得できたという点では、「べらぼう」は成功したといえるかもしれません。視聴率という量的指標だけでなく、視聴者の満足度という質的指標も重要なのです。

横浜流星の今後の活躍に期待

大河ドラマ主演を経験した横浜流星さんの今後のキャリアに、大きな注目が集まっています。29歳という若さで大役を務めた経験は、確実に俳優としての幅を広げたはずです。 映画やドラマで培ってきた実績に加え、1年間大河ドラマの主演を務めたという肩書きは、今後の仕事にプラスに働くでしょう。NHKでの初出演が大河主演という破格の扱いは、彼への期待の高さを物語っています。

「べらぼう」では蔦屋重三郎という複雑な人物を演じ分けました。夢を追う熱さ、商売人としての したたかさ、人間としての弱さ。多面的なキャラクターを表現する演技力は、多くの視聴者の記憶に残ったはずです。 今後は映画やドラマで、さらに多様な役柄に挑戦していくことでしょう。大河ドラマという大きな舞台を経験したことで、どんな役にも対応できる器の大きさを身につけたといえます。 次回作の発表が待たれるところです。視聴率という数字に縛られず、俳優としての成長を見守りたいものです。

まとめ:視聴率だけで測れない作品の価値